10代の子どもたちの多くは家と学校の往復ですが、それらに息苦しさを感じているときに利用できる場はあまり多くありません。中には虐待やいじめなどによって、家と学校以外に逃げ場、安心できる場が日常的に必要なケースもあります。日本の子どもに対する公的な支援が十分でない中で、児童相談所や警察が動くほどの案件ではないけれども、子どもの心身の発達の影響から、そのまま家と学校の往復でよいのかと思えるケースに出会うことは度々あります。
このような現状から、私たち3keysは、10代の子どもに必要だが不足している社会資源は「ひとりで安心して過ごせる空間と時間」であると考え、ユースセンター開設に至りました。
筑波大学の社会学者である土井隆義氏の著書『「友だち地獄」-空気を読む世代のサバイバル』『つながりを煽られる子どもたち』等によると、現代を生きる子どもたちは誰からも傷つけられたくないし、傷つけたくもないといった繊細な「優しさ」がかえって生きづらさを生んでおり、周囲から浮いてしまわないよう神経を張りつめ、その場の空気を読むことで疲弊しているといいます。
また、精神科医の小野善郎氏の著書『思春期の謎めいた生態の理解と育ちの支援』によると、10代の問題行動・非行に対して、大人が過剰に反応したり介入することは、かえって問題行動を生む原因となるため、子どもと大人の間にいる10代の子どもたちに対する大人の姿勢としては、①見守り ②メンタリング ③ガイダンス(支援・相談) ④治療 ⑤介入 を段階的に踏んでいくことが大切であるとのべています。
児童相談所や警察といった介入を目的とした機関や、医療的な治療を担う機関、学習支援や就労支援といった支援・相談を担う機関、電話相談やSNS相談といった傾聴・メンタリングする機関は世の中にありますが、最も基本的な見守りをする機関はほとんどありません。
SNSの発展や、「いいね」に代表される常に評価され、過剰に空気を読む時代の中で、孤立・孤独になることなく、子どもたちが更に過剰適応したり、過剰なつながり・承認欲求を促進させられず、10代という年齢も踏まえた見守りを中心とした居場所の在り方について模索をし、2021年から、水木と12月31日・1月1日以外いつでも立ち寄れる10代向けの居場所であるユースセンターを立ち上げました。2021年度は登録者数186人・延べ利用回数1,129回、2022年度は登録者数252人・延べ利用回数2,561回と、利用回数は倍増しており、子どもたちのニーズの高さを実感しております。
センターにおける最善の支援は、スタッフ(大人)とのコミュニケーションやスタッフが役に立つことではなく、10代の子どもたちの最もベーシックな支援のあり方である、各々ひとりで過ごす空間と時間を、質の高い状態に保ちながら提供し続けることです。
さらに詳しく知りたい方はこちらもご覧ください
https://www.youtube.com/watch?v=v9Yz9lHfD3M
【日本テレビ/オンライン記事】代表・森山のインタビューが掲載されました
■ 現場スタッフの仕事は?
利用する子どもたちが安心して過ごせるよう、以下のような仕事が基本です。
・センター内を清潔に保つための清掃や物品の管理
・利用登録や管理、食事提供、物品貸出
上述の通り、大人とのコミュニケーションを通じての支援ではなく、場として担保することがこのセンターの最大の意義なので、むやみな声掛け・介入はしません。
子どもと交流するというよりは、図書館のスタッフのように、子どもから話しかけられない限りは見守ることが中心な役割になります。
■ 求める成果
・子どもたちが清潔な空間で過ごすための、室内の環境維持
・センターの「場の担保」の意味を十分に理解し、質の高い空間と時間を提供し続けるための、大人としての意志の強さと継続力を保つ
・ガイドライン・マニュアルを正しく理解し、スタッフに求められている役割を果たす