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2020.02.05
その他

【サポーター通信から転載】3keysの支援から感じる児童虐待のいま

2018年に児童相談所が対応した児童虐待の対応件数は約16万件に上りました。2000年に児童虐待の防止等に関する法律が制定され、児童虐待は家庭内の問題ではなく社会の問題と定義され、児童虐待を発見した人は、たとえ確証がない疑わしいものだとしても、通報する義務が法律上定められました。

児童相談所の虐待対応件数の推移

一方で、児童虐待について日本はやっと世間の問題意識が高まった状況であり、課題がたくさん残っているのも現状です。そこで、3keysの支援から感じる解決すべき課題を3つピックアップしましたので、ぜひご一読ください。
 

1. 子ども本人の相談・通報率の低さ

児童相談所での虐待相談・通報の経路

児童相談所に寄せられる虐待相談・通報件数は増えていますが、子ども本人からの相談はいまだ低く1%となっています。 一方で、警察からの通報は49%となっており、警察が絡む事件になるまで、虐待が発見されない現状があります。

ー いまだ有料の相談ダイヤル ー

児童相談所の全国ダイヤル「189(いちはやく)」は、実はこれまで有料で12月からやっと無料になりますが、子どもが相談しやすくするための工夫はまだたくさん必要です。

実は2015年までこの全国ダイヤルは10桁の「0570-064-000」でしたが、2015年に3桁に代わりました。これ自体は良い変化ですが、その後、入電数がとても増えたことで接続率が50%から10%台に下がりました。

現在は20%台まで回復しましたが、いまだ接続率は高いとはいえません。12月の無料ダイヤルになることで、さらに接続率が悪化しないような工夫がどれだけされているのかが問われます。

ー 支援機関をどう社会が支えるか ー

3keysが運営する10代向け支援サービス・検索サイト「Mex(ミークス)」は、支援機関を掲載するだけでなく、正常につながるかのテストや、改善要求、利用した子どもの声を支援機関に届けるなども行っています。

その中で感じるのは、子どもの支援機関の受け皿はまだまだ不十分であり、相談や支援に追われている支援機関だけの努力では足りないということです。日本は少子高齢化社会の中で、社会保障費の多くは年金・医療・介護でなくなり、子どもや子育て支援には十分な予算がなく、公的支援もNPOや地域の団体も少ない人数・少ない予算で運営しているのが現状です。

子どもの支援の在り方は、児童相談所だけの責任ではなく、私たち一人ひとりがどこまで意識を高めていくかによって、変わっていくものではないかと思っています。
 


2. 虐待で児童相談所に通報した後のこと、ご存知ですか?

虐待は通報したらひと安心と思いたいところですが、通報後は家庭訪問や、近隣の人のヒアリングを行い事実確認をし、深刻さによっては一時保護をとって子どもと保護者を一時的に分離します。一時保護中はより詳細なことを子どもにヒアリングしたり、保護者との面談を繰り返し、その後子どもを家に戻すのか、施設や里親で暮らすのかを判断します。

出典:https://www.buzzfeed.com/jp/akikokobayashi/hitogotojyanai5

ー 施設や里親のもとに行ったのはわずか3% ー

平成29年度、児童虐待の対応件数は約13万件でしたが、そのうち、施設や里親のもとで暮らすことになったのはわずか約4,500件と3%程度にとどまりました。

すなわち、虐待として通報したとしても97%の子どもたちは数週間~数か月以内には家庭および地域に戻ることになるのです。家庭に戻った後は、継続的に訪問や指導を行うことになっていますが、年々増えていく虐待相談・通報に対して、ケースワーカーの数は増えていません。

2019年12月21日・22日に代表の森山も参加した、全国の虐待相談対応を行っている関係者が集う「日本子ども虐待防止学会」で、現場の方々は「保護だけで手いっぱいで、それ以降の支援まではほとんど手がまわっていない」と切実におっしゃっていました。

ー 地域に、虐待を受けてきた子どもたちの受け皿はあるのか? ー

出典:平成31年・厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課

97%が家や地域に戻ってくる中で、そういった子どもたちや、ひいてはその保護者を受け入れられるような環境が地域にどれだけあるのでしょうか。

行政の子ども予算(とりわけ貧困や虐待予算)は大変少ない中、子どもの分野は未だ地域のボランティアやNPOにゆだねられているのが実態です。虐待や、その先にある不登校・援助交際や性被害・望まない妊娠・自傷行為などを、地域のおじちゃん・おばちゃん・お兄さん・お姉さんが、どこまで対応できるのかは、非常に難しい問題になってきていると感じます。

3keysも最近ボランティアの活用の難しさを感じており、専門的な対応や緊急的な対応をできるように職員の採用を増やしてきています。また、数年前から全国各地で、虐待や自傷行為・自殺願望・不登校・望まない妊娠などに悩む子どもたちにどう向き合うのか、支援機関や一般の人向けに啓発を行ってきました。
https://3keys.jp/service/cis/

行政の体制が変わらない以上、地域やNPOも「できることをできる範囲で」ではなく、専門性を高め、行政では対応しきれない部分を担っていける組織への変化が求められていると強く感じています。
 


3. 虐待が表面化する時は「助けて」ではなく「死にたい」

3keysが運営している10代向けの支援サービス検索・相談サイトは、子どもたちが一人で抱えているあらゆる悩みを相談できることを目指しています。その中でも検索が最も多いのが「心身の不調」と「自殺したい」というカテゴリです。

Mex(ミークス)の検索カテゴリ

ー 子どもからの「もう生きてる意味がわからないです」という声 ー

しかし、自殺したいや心身の不調の実際の相談を見ていくと、虐待や育児放棄が背景に浮かび上がってくることは多々あります。こちらはMex(ミークス)にある「気持ちを吐き出す」に寄せられた子どもたちからの声です。

「私は家族と上手く行きません。私は感情が上手くコントロールが出来ないです。それもあって受け止めるどころか反論してしまう部分があります。それで私は親と上手くいかず手を出されることが増えました。声が枯れ、首や腕などに赤い傷ができるなど怪我もしてます。」

「親に毎日のように罵倒されています。お前はいらない、死ね。県外の高校でいじめられて実家に戻ってきたんですけど、お前は一回家を出たから1番立場が下やてゆわれて弟もいるのに邪魔もののように扱われます。何かあったら転入してこっち戻ってきたのに調子乗んなとゆわれ本当に僕はここの家族なのかと最近考えています。今本当に死のうと考えています。家族にまでそんなに邪魔もの扱いされたり、いらないとゆわれるなら死んだ方がいいんですかね?もう生きてる意味がわからないです。」

2020年4月より、しつけと称した体罰も禁止になりますが、子どもだけでなく大人も、どこからどこまでが体罰なのか、どこからが虐待なのか、しっかりわかっている人はどこまでいるでしょうか。

そんな中で、子どももそれは「親が間違っている」という認識ではなく、「自分が悪いから」や、「自分が我慢しなければ」と思い、その思いがつもりに積もって、自分の生きる価値すらも感じなくなっている現状があります。

ー 体罰・虐待などを知ることが、それをなくす最初の一歩 ー

3keysでは「ミーのなやみ」という、子どもたちに虐待や暴力などを知ってもらう動画を配信していますが、それは子どもが自分自身を責めてしまうことで、誰かに相談することすらやめてしまい、自殺願望や自傷行為などに至るまで一人で抱えてしまうことを防ぐためでもあります。

Mex(ミークス)でも動画を配信していますが、その影響もあってか、以下のような声も寄せられるようになりました。虐待だと知ることで、現状の捉え方や相談の仕方も少し変わってきます。

「母親に、お前なんか産むんじゃなかったなどと何回も言われた事があります。ずっと虐待ではないと思っていたけれど、調べてみると心理的虐待に当てはまるみたいです。」

「私、心理的虐待を父から受けていることがわかりました。父は昔から母にもDVを行なっていて、(これも心理的虐待だそうです)母が入院してからは私を追い詰めるようになりました。私はできるだけ外にいて、家にいる時間を短くしていました。今度、父と会わなきゃいけなくて困ってます。」

また、大人ひとりひとりが、体罰・虐待といった子どもの心身に悪影響を及ぼすとされている範囲を知り、適切に子どもたちに関わることが、子どもたちの権利を守り、子どもたちがのびのびと育つための最初の一歩だと思っているからです。

これを読んでいるみなさまは、どれくらい虐待の範囲を知っていますか?4種類の虐待を言えますか? 私たちは3keysを介して子どもたちを応援しているみなさまには是非、虐待のことをしっかり理解して、自らが加害者にならないこと、そして周りに知らない人がいたらそれを伝える側にもなって欲しいと願っています。

ー 日本の虐待・体罰の対応は、世界より20〜30年遅れ? ー

2020年4月より、虐待だけでなく、体罰も禁止になります。現在日本では4月に向けて体罰の範囲・定義が議論されていますが、国連では「どんなに軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ、何らかの苦痛または不快感を引き起こすことを意図した罰」と定義されています。世界では、1979年にスウェーデンが体罰を禁止して以降、1990年に発効した児童の権利に関する条約に基づき、58か国(2019年10月末時点)が子どもに対する体罰を法律で禁止しています。

日本は世界から20〜30年遅れでついに体罰が禁止になります。虐待と体罰の違いについてどこまで明確化されるかも注目ですが、体罰はこれまで「しつけ」と曖昧にされていたものについても含まれる予定なため、これまでよりも子どもの権利に寄り添った形になることは間違いありません。

「日本で生まれ育った子どもたちは先進国諸国に比べて子どもの権利が守られない。」そういう状況をなくしていくためにも、私たち一人ひとりが意識を高くしていき、勉強をしていくことが急がれていると感じています。
 

※こちらの記事は、2019年11月・12月、2020年1月の3回にわたって、寄付者の方々に配信したメールマガジン「サポーター通信」を編集して作成しました。寄付者のみなさまには、活動報告をまとめた毎月のメールマガジンの配信や、年次報告書の郵送などをさせていただいています。また、認定NPO法人である3keysへのご寄付は税控除の対象となり、寄付額の最大50%が還付されます。マンスリーサポーターが増えることは、3keysが安定的に支援できるキャパシティを増やしていくことにつながります。社会全体で子どもたちを支えるために、ぜひご支援をお願いいたします。https://3keys.jp/donation/supporter