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2020.05.12
その他

【支援者インタビュー】一般社団法人新しい贈与論/リブセンス共同創業者・桂大介さん

“一般社団法人新しい贈与論・桂大介さん”

寄付に費用対効果やソーシャルインパクトなどの理想は求めない。
もう少し育てて、発酵して、熟していくものにしたい。

2011年に史上最年少で上場を果たし、「マッハバイト」や「転職会議」など複数のインターネットメディア運営事業を展開する株式会社リブセンスの共同創業者・桂大介さん。社外での寄付・発信活動にも熱心で、2019年8月に寄付や贈与についてみなで学び、贈る先をみんなで決めるコミュニティ「一般社団法人新しい贈与論」を立ち上げました。そして2020年1月には、会員の方の推薦・投票により3keysをご支援いただきました。この機会に、新しい贈与論を立ち上げた経緯や、寄付活動への思いを伺いましたので、ごひご一読ください。
 


 

左:3keys代表・森山誉恵、右:株式会社リブセンス 共同創業者・桂大介さん

森山:新しい贈与論のメッセージには、「誰かのしあわせを願うことに、コスパなんて関係ないってこと。」と書いてあり、桂さんのインタビューなどでも寄付に対して「リターン(見返り)を気にしない」と仰っているのを拝見しました。営利セクターの方でこういうメッセージを出している方はなかなか珍しく、驚きました。この考えにいたったのはなぜですか?
 
桂大介さん(以下、桂):共同創業したリブセンスで上場を果たしていますが、エクイティファイナンスや株式市場が妥当性の高いフェアで完璧な仕組みかというと、僕はそうは思いません。誰もコントロールできないし、合意形成で成立してはいるけれど、妥当性に基づいた合意というより、容易に集団で暴走できてしまうような合意です。
 
まさにトレーダーの方はそれらを利用して利鞘を抜いていくんですよね。そこに渦巻いているものは、冷静な合意の集合体ではなく、それこそ波とかモメンタムとか、もっと強く言うと一種のブームに過ぎないのかもしれない。株価だって、幻想によって動いているのかもしれない。自分の会社が上場してはじめてそういうことを考えるようになりました。
 
成功は自分の努力の賜物だと思いやすいものですが、僕は運と環境で決まるものが大きい感じがするんです。
 
森山:まだ日本では、そもそも「寄付」しようという方が少ないと思いますが、桂さんは寄付に対してすごく前向きというか、いい意味でカジュアルにとらえている気がします。日本社会で育つとそういう方ってとても珍しいと思うのですが、最初に寄付しようと思ったきっかけはどういった思いからですか? 海外やキリスト教などの文化圏育ちというわけではないですよね?
 
桂:ずっと日本育ちです(笑)。 もともと少額の寄付はよくしていたので、大きな額にハードルを感じることはあまりありませんでした。高校時代にフリーランスとして活動してある程度稼げていたり、大学の在学中に起業をしたりしたのですが、単に環境やタイミングが良かっただけだと思っているんです。そのラッキーな感じに今でも違和感を抱いていて、「なんか釣り合ってないな」って気持ちが強くて。それが影響しているのかもしれません。ラッキーで得をした分、社会に返しているというか。
 
森山:別のインタビュー記事で、アイスバケツチャレンジやホワイトバンドなどの一過性のブームへの違和感を覚えるともおっしゃってましたね。
 
桂:そうですね、あれは寄ってたかってなにかを消費しているように見えます。アイスバケットもタピオカも同じところにあって、それがSNSで消費されていく。もちろんタピオカよりアイスバケットのほうがまだマシなんだけれど(笑)。そういうキャンペーンの衝動性とか、集団でなにかを消費してすぐ飽きて次に行っちゃうみたいな構造自体が、別の問題を生み出している気がします。
 
森山:新しく立ち上げた「新しい贈与論」では、寄付に対しての理想はありますか?
 
桂:新しく立ち上げたコミュニティでは、それこそ費用対効果やソーシャルインパクトなど、あまり理想を追い求めないようにしようと思っています。

以前、社会課題の分野による寄付の偏りをなくす目的で、寄付先をランダムに選択する「ランダム・ポートフォリオ寄付」っていうのを作ったんです。それはそれで面白かったものの発展しない部分もあって、もう少し育っていくものにしないといけないなと思ったんです。育てて発酵して、熟していくものにしたくて「新しい贈与論」を作りました。

2019年8月に立ち上げた、一般社団法人 新しい贈与論のトップページ

森山:会員の方はどういった思いの方がいらっしゃるんですか?
 
桂:今は50人くらい、あんまり属性が偏らないように徐々に増やす予定です。一期メンバーは僕の知り合いの経営者が多いですかね。そんなに寄付に興味があるわけではないが、社会貢献には興味があってきっかけがあれば… みたいな人たちです。二期メンバーは一般募集したので、寄付や贈与に興味がある人が入ってきて、学生さんもいます。
 
森山:寄付に興味がなかった人たちの変化はありましたか?
 
桂:団体の立ち上げからまだ3カ月なので、少しずつですかね。投票が毎月あり、3人がそれぞれ推薦した3団体に対して投票で順位を付けるんですけど、その時に支援したい気持ちと寄付したい気持ちが同時に湧き上がるんですよね。どこに寄付するか、ものすごくシビアにストイックに考える機会になっています。
 
森山:過去の記事で、「NPOにこうなってほしいというイメージがあるわけじゃない」とおっしゃっていましたが、でも何かしらの形で選ばなくてはいけないと思いますが、その時はどうやって選んでいますか?
 
桂:それは本当に難しくて、僕が「新しい贈与論」を立ち上げた理由も、自分で寄付先を決めるのがあまりに難しかったから、というか分からなかったからなんです。「これ誰かと相談したいな」と思ったのがきっかけです。
 
寄付先を選ぶときってみんな語る言葉がないんですよね。例えば音楽だったら、クラシックとジャズ、ポップスやロックのような色々なジャンルがあって、これがいいよねってそれぞれが好みを言い合える状態になっているんだけど、寄付ってそれがない。費用対効果とかに収斂しちゃうのもそれが原因かなと思っています。
 
こういうことやっている団体ならこっちもいいよねとか、君だったらその団体が合いそうだねとか、今のところそういう会話がまったく交わされていない。そこが自分もすごく悩ましいです。
 
森山: 確かに音楽に比べたら、全員がひとつの正解を探してる感じはありますよね。社会ってより多くの人が幸せになるためものなので、外から正解を与えられるものではなく、ひとりひとりが自分の価値観や色を大切にした先にあるものだと思うんですよね。だから、全員が自分の外に正解があるかのように探すのは、実は「最大多数の最大幸福の実現」から遠ざかると思っています。
 
桂:そうなんです、それが僕はあんまりおもしろくないなと思っていて。僕は寄付を考えるときに、あんまり「社会を良くしたい」とは言わないようにしています。それを言っちゃうとどれが正解かって話になっちゃうから。そこをなくしたまま、それこそ音楽とかファッションを語るように、コーヒーを飲むような気軽さで語り合っていきたいんです。

気さくにお話してくださった桂さん

森山:質問が重なるかもしれませんし、リターンを求めないという中であえて聞きますが、そんな中でもNPOに期待するものってありますか?
 
桂:そういう観点でいうと、変な波に飲み込まれないでほしいなってすごく思いますね。僕が根本的に疑っているのは理性主義とか合理主義なんですよね。その波に経済界が乗っかって、次はソーシャルセクターにもきているなと思っています。
 
もちろんそこに乗っかっていく団体もあるでしょうし、本来的に非営利が全部オルタナティブだというつもりはありません。でも、メインの社会システムからちょっとはぐれた人たちに手を差し伸べて行くときに、メインストリームの論理に乗っかってしまうことで身動きがとれなくなることもある。しかもそっちは甘い香りを放っているので、良く見えるものですしね。
 
森山:すごく共感します。メインストリームはすべての課題解決を担えるわけではないし、そこで解決されなかったからこそ、非営利のセクターで担っている部分があるのに、メインストリームの解決策を非営利で真似するのはむしろとても慎重になるべきだと考えています。営利と非営利は、私的には、父性と母性くらい違うところがあると感じてて、最近の非営利は父性に寄ろうとしている違和感があります。しかもそれが社会的にはすごく求められているというか。でも私たちが関わっている子どもたちは人権とか権利以外では語れない部分もけっこうあるから、成果とかインパクトとかが先だってしまう危険性を感じます。
 
桂:そうですよね。なんかそういうことを毅然と言える人が増えるといいと思います。よく子どもを支援するときに、「日本は少子化で労働力が足りないから」というのを理由にしがちなんですけど、本当はそんなこと思ってないでしょ?って(笑)。たぶんみんな単純に困っている子どもを助けたいと思っているけれど、なぜか語るとそういう言葉になってしまうんですよ。
 
森山:確かに… ホントはみんなシャイなんですかね?
 
桂:シャイもあると思う(笑)。でもやっぱり風潮とか、なにかそういうことを言わされているというか。そういうスタンダードな理論やメッセージが流通していて、みんなそこに流れていくというか、縛られているような気がします。
 
森山:どうやったらその縛りを解けると考えていますか?
 
桂:だからこそ僕みたいな、どこのNPOにも属さない人間がそれを言っていきたいと思っています。

Mex(ミークス)の冊子に目を通す桂さん

森山:私たちだけでは伝えきれない部分も多いので、そういう方が増えてくださるとすごく心強いです。最後に、私たち3keysに期待していることがあれば教えてください!
 
桂:子どもの問題は解決したいと思う人が多い一方、当事者が声をあげられず社会から見えづらいというのが特徴だと思います。だからといって当事者を置き去りにして、周囲がセンセーショナルに取り上げればいいものでもありません。新しい贈与論では寄付にあたり会員全員が理由を提出するのですが、3keysさんへは細やかで地道な活動への信頼の声が数多くあがりました。そうした子どもたちを第一に考えた活動が、今後も多くの未来を救うことを願ってやみません。

 

3keysが運営している、10代向けの支援サービス検索・相談サイト「Mex(ミークス)」は、2019度の利用者数が100万人を超えました。現在3keysでは、必死に助けを求めてきた子どもに対して、なんとか支援の手がつながるセーフティネットとしての拡充を計り、クラウドファンディングでご支援を募っています。ぜひ私たちと一緒に、困難な状況に置かれた子どもたちを支えてください。
→ READYFORのプロジェクトページはこちらから

一般社団法人 新しい贈与論
新しい贈与論は、寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。
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