子供たちがより安心して利用できるよう、年間約4万件の相談がある「24時間子供SOSダイヤル」の実態調査を行いました。今回はその一部を速報値として公表いたします。
認定NPO法人3keys(スリーキーズ)は、 自団体で運営している10代向けの相談・支援サービス検索サイト「Mex(ミークス)」で特に利用の多い「24時間子供SOSダイヤル」について、 子どもたちが今後より安心して利用できるよう、 全国の実態調査を行いました。 本調査及び啓発を通じて、 いじめや子どもの自殺等、 子どもを取り巻く事件が起きた際に必ず紹介される「24時間子供SOSダイヤル」がより正しく広報されることを願っております。
3keysは10代向けの相談・支援サービス検索サイト「Mex(ミークス)」を運営しており、 子どもが利用できる全国の官民の相談窓口や支援機関を紹介しております。 Mexには、 誰にも言えない相談を抱えた主に10代が、 全国で年間100万人以上訪れ、 そのうち、 2019年度は1万人以上がMexに掲載されている相談機関にコンタクト、 相談をしています。
●Mex (ミークス)利用者数(年に1回以上訪問した数)の推移
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その中でも「24時間子供SOSダイヤル」はMexの中でも利用率が高い相談窓口です。 文部科学省の28年度の報告では、 全国で年間約4万件の相談を受けており子どもを対象とした相談機関の中では最も大きな相談窓口の一つです。 また、 いじめや子どもの自殺等の子どもを取り巻く事件が起こる際に、 メディア等で必ず紹介される窓口でもあります。
このように、 「24時間子供SOSダイヤル」についてはたくさんの子どもたちに利用される一方で、 運営状況や、 詳しい対象についての報告資料がほとんどなく、 制度の根拠法もない中で、 情報開示も少ない状況にありました。
3keysが運営している10代向けの相談・支援サービス検索サイト「Mex(ミークス)」には、 「24時間子供SOSダイヤル」を利用した子どもたちから匿名で以下のような声が届いていました。
“24時間子供SOSダイヤルで繋がった先が小・中学生専門で 説明にあったような「学生全般」ではなかった”
“この前電話したけど、 ちょっと待ってと言われ、 切られて1日待ったけど電話はかかって来なかったので二度とかける気はない”
“親に連絡は行きますか?”
また、 Mexの利用状況からは、 上記以外にも大学生や専門学校生などの利用も見受けられましたが、 それぞれの窓口で、 どのような対象年齢や相談範囲を設定しているのか、 運用資料が十分でない状況にあります。
3keysでは、 「24時間子供SOSダイヤル」に相談する前に対象年齢や相談範囲などを適切に伝え、 せっかく勇気を出して相談した子どもたちが「対象ではなかった」「本窓口では対応できないと言われた」といった対応を受けることなく、 相談して良かったと思えるよう、 2020年11月~2021年1月の約2か月間にわたり、 全国アンケート調査を行いました。
「24時間子供SOSダイヤル」は文部科学省のHPに「全都道府県及び指定都市教育委員会で実施」とされていることから、 全都道府県及び指定都市教育委員会(以下、 教育委員会等)68か所に郵送し、 54の回答(内、 有効回答数53)を得ることができました。 今回はその速報値として、 一部の結果を公表いたします。 なお、 より詳細な内容につきましては、 追加ヒアリングなどを行った上で、 改めて発表予定となっております。
「24時間子供SOSダイヤル」が広報される際に、 子どもの対象学年等について詳細な記載はありませんが、 私たちの調査の結果から、 担当する教育委員会等によって対象にばらつきがあることが分かりました。
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義務教育下の小中学生(在学中)については、 96%から「対応している」と回答がありました。
一方で、 小中学生でも不登校の場合 については、 小学生で 94 %、 中学生で92%が「対応している」と回答するにとどまります。
高校生の対応状況については、 在学中の場合でも9 2 %が「対応している」と回答。
高校生でも 不登校の場合は 91% 、 高校中退の場合は7 4 %と、 更に低い対応状況でした。
また、 特別支援学校等に在学している子どもの場合は、 高校生よりも高い 9 4 %から「対応している」と回答 。
一方で、 特別支援学校等の 不登校の場合は 91 %、 中途退学の場合は 74 %と高校生の不登校および中退と同様の傾向となりました。
最後に、 小学生未満への対応については53%、 大学生に対しても一部の教育委員会等は相談に対応しているとの回答がありました。
なお、 いずれにも未回答とした教育委員会等は4%ありました。
また、 「24時間子供SOSダイヤル」は「 子供たちが全国どこからでも、 夜間・休日を含めて、 いつでもいじめやその他のSOSをより簡単に相談することができる」ということをコンセプトとしていますが、 対象エリアに在住もしくは在学している子どもすべてを相談の対象としている教育委員会等は47.2%にとどまっており、 対象エリア内での在学者または在住者のどちらかのみを対象としている教育委員会等が43.4%もありました。
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24時間子供SOSダイヤルは、 「 いじめ問題やその他の子供のSOS全般に悩む子どもや保護者等」を対象、 いじめだけでなく、 子どものSOSであればあらゆる対応ができるダイヤルであるとされています。
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この度の調査の結果、 多くの自治体で、 幅広い問題に対応している状況は把握できましたが、 各教育委員会等によって対応できる範囲に微妙な違いが見受けられました。 特に、 いじめについては、 学校内のいじめには対応しているが、 学校外のいじめには対応していなかったり、妊娠にまつわる相談や、 性的マイノリティや、 鬱などの心身の不調、 犯罪被害/非行には対応していない教育委員会などがあるといった状況がわかりました。
なお、 電話での対応後についても、 主体となって直接的な解決に向けて主体的に動くと回答した機関、 直接的な解決に向けた動きをせず、 相談者に他機関への相談を促したり、 他機関を紹介すると回答した機関、 電話で話を聴くことを主たる対応として、 直接的・間接的な解決に向けた動きを取らないと回答した機関と、 ばらつきがある状況でした。
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最後に、 「24時間子供SOSダイヤル」の接続率についての調査も行いましたが、 ほとんどの教育委員会等で接続率についての調査を行っていませんでした。
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この項目については、 私たち3keysが運営している10代向けの相談・支援サービス検索サイト「Mex(ミークス)」に、 「24時間子供SOSダイヤル」を利用した子どもたちから匿名で以下のような声が届いていることから、 調査を行うこととしました。
“24時間って書いてあるのに 電話がつながらない ……。 どうして …夜中はダメなの…? 助けてくれるんじゃないの …?”
”相談したい時に混み合ってるとか通話中とかで相談できない、 どうにかしてください”
「24時間子供SOSダイヤル」は、 24時間いつでも電話がつながることや、 悩みの種類に寄らず相談できる等、 子どもたちにとって非常に使いやすいコンセプトとなっております。 一方で、 コンセプトに対してまだ実態が追い付いていない部分も多く、 子どもたちに代わって大人がコンセプトと実態が近づくための働きかけや、 実態に即した啓発・広報を行う必要性があると感じています。
今回調査にご協力いただいた教育委員会等の中には「子どもたちにとってよりよい窓口になるのであれば積極的に協力したい」という声を挙げてくださったところもあり、 コンセプトと実態の乖離に苦しんでいる様子もうかがい知ることができました。
本調査を受けて、 3keysとしては、 より詳しい調査結果の公表に向けた準備、 および、 担当省庁である文部科学省への働きかけや、 「24時間子供SOSダイヤル」を紹介している各メディアへの啓発をして参ります。
■調査機関
令和2年11月19日(発送日)~令和3年1月15日(消印有効)
■調査方法
全国の都道府県及び政令指定都市の教育委員会及び24時間子供SOSダイヤル窓口への郵送配布・郵送またはWebアンケートでの回収。
■実施主体・監修
実施主体:認定NPO法人3keys
監修:川上泰彦(兵庫教育大学教授)
■調査票全文(pdf)
https://drive.google.com/file/d/1hSqRpZ7-U5Fi9A4VVEvfL5l7kuhTKAp9/view?usp=sharing
※本調査は積水ハウスマッチングプログラムの助成を経て実施いたしました。