更新:2021.12.22
7人に1人の子どもが貧困状態
「子どもの貧困率」という指標があります。大人も含めた国全体の「相対的貧困率」とともに、日本では厚生労働省が3年に1度公表するものです。2018年の最新の数字は13.5% 。経済協力開発機構(OECD)が15年に改定した新基準では14.0%で、実に日本の子ども(17歳以下)の7人に1人が貧困状態ということになります。実数に直すと、日本の17歳以下の人口は約1890万人なので、約255万人ということになります。これは大阪市の人口まるごととほぼ同じです。
貧困状態とは、どれくらいの年収を指すのか?
この指標で貧困とされる人とは、どんな状態の人でしょうか。
定義上は国ごとに定められる「貧困線」を下回る所得で生活する人のことです。「貧困線」とは、その国や地域の水準の中で比較して、大多数よりも貧しい状態のことを指しています。つまり、可処分所得がこれを下回れば貧困世帯に該当することになります。可処分所得は、就労所得や財産所得、年金所得、仕送りといった現金収入の合計から税金や社会保険料を除いた額で、いわゆる手取りの年収となっています。 新基準から、可処分所得の算出の際に差し引く拠出金の中に、新たに自動車税や企業年金が追加されました。 詳しくは、以下の図を参考にしてください。
生活水準を推し測るためには、世帯人数も考慮しなくてはいけません。1人世帯と2人世帯、2人世帯と4人世帯では生活に必要な額が変わってくるからです。厚生労働省が、2018年に貧困線を公表しており、単身者世帯では約124 万円、2 人世帯では約175 万円、3 人世帯では約215 万円、4 人世帯では約248 万円となっています。
公益財団法人 日本修学旅行協会が2012年度に調査した修学旅行費用の平均を見ると、中学校の平均が約6万円で、高校の平均が約9万円でした。つまり、子ども1人を修学旅行に行かせるだけで月収の半分前後がなくなってしまうような状況を表しています。また、貧困線は貧困世帯の平均値ではなく、貧困線が貧困層の最高値であることもデータを見る上で注意が必要です。
なお、貧困率の水準は、主要7カ国(G7)の中でも「格差社会」とのイメージが強い米国とともに高い状態にあります。実は、日本は人口に対して貧困状態の子どもが多い国なのです。
日本はひとり親の半分が貧困の国
日本における貧困問題で、特に課題とされているのが、「ひとり親世帯の貧困」です。日本のひとり親家庭の貧困率は2018年時点で48.2%(新基準)。実にひとり親の2人に1人が貧困という割合で、これは先進国で最低水準にあります。
下の表を見ると、日本では2016年時点で、1993年に比べてひとり親世帯の数が大幅に増えていることが分かります。ひとり親世帯の87%を母子世帯が占めるため、母子世帯の多くが貧困状態にあるとも言えます。
さらに2014年、当時の駐日米大使だったキャロライン・ケネディさんは「日本は仕事をすることが貧困率を下げることにならない唯一の国」と発言しました。日本の母子家庭の就業率は8割程度と、先進諸国の中でもトップクラス。それにも関わらず、ひとり親の貧困率が最低水準であることを指摘したものです。
かつて日本は「1億総中流社会」と言われていた時代があり、何となく貧困とは無縁だという印象がまだ残っているかもしれません。しかし現実には、7人に1人の子どもが貧困状態であり、さらに、ひとり親家庭の半分近くが貧困状態にあるということが、目を背けることができない事実となっているのです。
- 出典1:厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」p.14を元に3keys作成
- 出典2:厚生労働省「国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問」p.3を元に3keys作成
- 出典3:厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」p.14、「よくあるご質問(貧困率)」を元に3keys作成
- 出典4:OECD Data「Poverty rate」 を元に3keys作成
- 出典5:OECD FAMILY DATABASE「Child poverty」p.2を元に3keys作成
- 出典6:内閣府男女共同参画局「母子世帯数及び父子世帯数の推移」を元に3keys作成
- 出典7:三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済政策部 主任研究員 小林 庸平「子どもの貧困・シングルペアレンツをめぐる課題の整理と解決の方向性」p.6を元に3keys作成