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日本は性犯罪に寛容? ~性交同意年齢は13歳、主要国で最低

「日本は性犯罪者に甘い」といわれることがあります。欧米諸国に比べて性犯罪(特に強制性交等罪)の成立要件が厳しく、性交同意年齢が低いことなどから、「被害者に寄り添った制度になっていない」という指摘があるのです。

110年ぶりに改正された性犯罪に関する刑法

2017年、性犯罪に関する刑法が改正されました。これは実に110年ぶりの大幅改正で、それまでの条文が作られたのは明治40年の制定時。日本の法律がいかに手を加えられずにきているかを象徴することとして、注目を集めました。

主な変更点は以下のとおりです。

性犯罪に関する刑法の改正内容
*出典1

いずれの改正も、被害の実態に近づいたものだといえそうです。ただ、これではまだ十分ではないため、2022年9月現在、以下のような課題について法務省の法制審議会で法改正に向けた議論が進んでいます。

残された課題1 厳しい性犯罪の成立要件

日本では被害者が13歳以上の場合、「抵抗が著しく困難になるほどの暴行または脅迫があったこと」が証明できなければ、強制性交等罪や強制わいせつ罪は成立しません。

刑 法(改正後)

第百七十六条(強制わいせつ罪十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

第百七十七条(強制性交等):十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

密室や目撃者がいない場所で被害に遭った場合、「暴行・脅迫にあたる行為があった」という事実を証明することは困難です。また、それらの事実を証明しなければならないというのは、被害者にとって苦痛をともなうことでもあります。

一方、多くの欧米諸国では、強制性交等罪にあたるレイプ罪または強制わいせつ罪の成立要件に「暴行や脅迫」がありません。おおむね「被害者の同意がない(またはその能力がない)状態での性行為」を要件としています。条文はそれぞれですが、例えば世界でも最も先進的とされるスウェーデン刑法の規定では「自発的に参加していない者と性交をし、または侵害の重大性から鑑み性交と同等と認められる性的行為をおこなった者は、レイプ罪として2年以上6年以下の拘禁刑に処する」とされており、「Yes means Yes」型といわれます。「Yes means Yes」型とは、相手が明確な合意を示さないままおこなった性行為はすべて違法であるとするものです。

日本では被害者が13歳以上であれば、暴行や脅迫をされた事実を子どもの場合でも検察官が証明することを求めるのに対して、スウェーデンでは被害者が子どもの場合はもちろん、大人であっても、被害者側にそうした証言を求めるのではなく、加害者側に被害者から同意があったことの証言を求め、検察がそれを証明する必要があるという大きな違いがあります。どちらが被害者の気持ちに寄り添った法律であるかは明白です。

残された課題2 13歳は「性交同意年齢」として妥当?

上述しているように、日本の刑法の規定では、個人が性行為に同意したと見なされる年齢の下限を13歳としています。たとえ相手の同意があったとしても13歳未満への性交などは犯罪として断じられます。これは、13歳未満はその成熟段階において性的な同意をするのに十分ではないとの考えからきています。

それは同時に、13歳以上であれば、加害者が監護者等でない限り、「抵抗が著しく困難になるほどの暴行または脅迫があったこと」が証明できなければ、強制性交等罪や強制わいせつ罪は成立しないということを指します。もし、13歳の子どもが望まない性行為を強要されたとしても、何も言えず固まってしまったような場合は、法定刑の重い強制性交等罪や強制わいせつ罪は認められないのです。相手との年齢差や性差、体格や立場の差といった様々な要因があり得るため、暴行・脅迫がなくても望まない性行為をさせられる可能性は十分にあります。予測不可能な事態であるケースも少なくない中で、暴行・脅迫の証拠をしっかりと提示するということが、被害者にとって、ましてや13歳の子どもにとって、非常に難しいことであるということは想像に難くありません。

被害者が13歳以上

2021年、フランスはこうした性交同意年齢を13歳から15歳に引き上げました。それまで同国では強姦罪に関して明確な年齢規定がなく、11歳女児と淫行した30歳男性が強姦罪ではなく性的虐待のみの処罰になった事件を契機に、社会的な批判が高まったことがきっかけとされます。国際的には性交同意年齢は14~16歳としている国が多く、日本は最も低い水準の国です。

性交同意年齢の国際比較
*出典2

性交同意年齢については、子どもを性被害から守るという観点では引き上げれば引き上げるほどよいように思えますが、一方では、その年齢まで子ども自身が「望む性行為」を法律上選択できないという側面もあります。「何歳ならばよいのか」という問題は、子どもの権利と、子どもを性被害から守るという両面から議論していくことが大切です。少なくとも、現在の日本の性交同意年齢は世界的に見ても低く、子どもが性被害に遭っても自己責任論に傾きやすい状況にあることは確かです。それを踏まえて、性交同意年齢を何歳に定めるのかは、子どもたちを中心に置いて、真剣に議論していくべき課題です。

残された課題3 監護者の範囲せますぎる

子どもの性被害について見ると、今回の法改正で、監護者による18歳未満の子どもへの性加害が「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」で処罰できるようになったことは大きな変更でした。

刑 法(改正後) 

第百七十九条(監護者わいせつ及び監護者性交等):十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。

ここでいう監護者とは、監護権(未成年の子の世話をし、教育をする権利)を有する者のほか、事実上、継続的な保護・監督の関係がある人のことです。実親のほか、養親や親族、養護施設の施設職員などの場合もあります。親などの強い支配力を持つ存在に対して、子どもは明確な拒否が難しく、加害者は暴行や脅迫なしでも従わせる(表面上同意させる)ことが容易です。そうした立場に乗じての性行為は、たとえ暴行や脅迫がなくても罪に問うことができるようになりました。

*出典3

これまでは、強制性交等罪や強制わいせつ罪に当てはまらなければ、法定刑の軽い児童福祉法違反の淫行罪として扱うしかありませんでした。児童福祉法違反における淫行罪の罰則は、都道府県の条例によって異なりますが、2年以下の懲役または100万円以下の罰金とされていることが多いです。

ただ、この「監護者」の範囲はせますぎるとの指摘があります。対象は主に親が想定されていますが、子どもに対して強く支配する力を持ち得る立場は教師やコーチ、雇用主など幅広く存在します。しかし、こうした人からの性被害は、やはり暴行や脅迫その他の犯罪の要件を満たさない限り、現行の刑法では処罰されません。例えばイギリス(イングランド及びウェールズ)*1は、こうした支配-従属的な関係になり得る立場を類型化し、その支配的地位を用いて性交などに及んだ場合、処罰できるよう法律が整えられています。同様の法改正が必要だという声は、日本でも人権団体などを中心に強くあります。

義務教育で性交を教えないという矛盾

こういった性被害をとりまく法律がある一方で、日本の文部科学省が定める学習指導要領には、1998年以降、通称「はどめ規定」と言われる記載が存在します。学習指導要領に記されている性に関する「はどめ規定」は以下の2つです。

小学5年 理科:「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」
中学1年 保健体育科:「妊娠の経過は取り扱わないものとする」

文部科学省 「小学校学習指導要領 (2017 年告示 )」「中学校学習指導要領 (2017 年告示 )」より

この「はどめ規定」によって、義務教育の教科書に性交に関する記述はなく、学校教育の中で性交について教えることは避けられる傾向があります。13歳以上であれば、暴行・脅迫がない性行為は法的に本人が同意した性行為だと見なされるにも関わらず、義務教育の中でこれらについて学ぶ機会はないのが日本の現状です。

一方、2009年にユネスコが公開した「国際セクシュアリティ教育ガイダンス(2018年改訂)」の生殖に関する項目では、年齢別に以下のような学習目標が示されています。

5~8歳:「赤ちゃんがどこから来るのかを説明する」
9~12歳:「どのように妊娠するのか、避けられるのかを説明する。避妊方法を確認する」

国際連合教育科学文化機関(UNESCO)「国際セクシュアリティ教育ガイダンス(2018年改訂)」より

性交や避妊について、ドイツのブランデンブルク州*2では小学校高学年で、イギリス(イングランド及びウェールズ)*1やフランス、オランダ、フィンランドなどでは中学校で教えるといいます*3。国際的には、性教育は基本的人権の1つとされ、性行為や避妊の方法はもちろん、性暴力、性感染症、そしてジェンダー論まで、包括的な性教育をおこなう国も少なくありません。

日本でも2021年から、子どもたちが性犯罪や性暴力の当事者にならないよう、全国の学校において「生命(いのち)の安全教育」が試験的にスタートしています。しかし、その中でも性交や同意の重要性などについて具体的に触れられてはおらず、また現状では「生命の安全教育」を授業に取り入れるかどうかは各学校の判断にゆだねられているため、2021年の実施校は全国の国公立小・中・特別支援学校およそ30,000校*4のうち、50校にも及びません*5。すべての子どもに対しておこなわれる必修授業ではないのです。

性交や同意の重要性を取り扱った授業が中学生段階でおこなわれないのであれば、その年齢の子どもたちに性行為について同意があったと法律で認めることには、大きな矛盾があります。性交などに関する正しい知識を持たないまま、子どもたちはどのように自らの望む性行為を選択したり、性被害から身を守ったりすることができるのでしょうか。当事者である子どもたちにしっかりとした知識を与えていないとしたら、それは大人の責任です。大人の価値観に左右されることなく、子どもたちの人生が守られる社会であって欲しいと願います。

*1 イギリスは4つの非独立国(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)によって法制度や教育内容が異なる。
*2 ドイツは連邦政府のため、州によって教育内容が異なる。
*3 橋本紀子,池谷壽夫,田代美江子『教科書にみる世界の性教育』(かもがわ出版,2018)より
*4 文部科学統計要覧(令和4年版) より
*5 文部科学省 令和3年度「学校における生命(いのち)の安全教育推進事業」実施機関一覧 より

本記事は後藤弘子氏(千葉大学大学院社会科学研究院教授)に監修していただきました。

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