3keysでは、非交流型の居場所に対する思春期世代のニーズをより詳しく理解するため、中高生を中心に4,000人を対象とした調査をおこないました。本シリーズではこの調査に携わった4名の検討委員の方々に、調査結果や非交流型の居場所の重要性について伺います。
今回の4,000人調査では、具体的に居場所に何がほしいかを尋ねるだけでなく、なぜ居場所を必要としているのか、その背景を探る分析もおこないました。分析にあたって中心的役割を担ってくださった北海道大学大学院教育学研究院教授 加藤弘通先生に、結果について解説していただきました。

思春期世代が居場所に求める5つの要素
――中高生世代が安心して過ごせる居場所について分析した結果、居場所に求められる5つの要素が分かったそうですね?
そうですね。中高生は居場所を評価する上で、こちらにある5つの要素を大事にしていそうだということが分かりました。

まず、その居場所が人から知られていないといった「秘匿性ニーズ」ですね。それから、好きなことをして自由に過ごせる「自由さニーズ」、一人で静かに過ごせる「ひとり志向ニーズ」、ありのままの自分でいられて否定されないとか、自分の希望を受け入れてもらえるといった「被受容性ニーズ」、最後に駅から近い、自分の家から近いなどの「利便性ニーズ」の5つです。
――被受容性という言葉が聞き慣れないのですが、もう少し詳しく伺えますか?
被受容性というのは心理学用語で、自分を変化させることなく受け入れてもらえるといったような言葉ですね。
積極的に希望を伝えて応えてもらうというよりも、例えば、少し人と違った格好や行動をしていても、否定せず、何か理由があるんだろうと思ってもらえる、そんなような感覚です。自分を変えなくても、ありのままの姿で受け入れてもらえると感じるという点で「安心感」に近いのかもしれません。
「非交流」を求める中高生は約33%いる
――この5つの要素のどれを強く求めるかで、さらにタイプ分類もできるんですね?
それぞれの回答者が5つの要素をどのぐらい大事だと思っているかについて評価した得点を見ていくと、3つのグループに分かれました。

まず、他の人よりも「秘匿性」と「ひとり志向」を重視する人たちを「非交流重視グループ」と名付けました。反対に「秘匿性」と「ひとり志向」をそこまで重視しない人たちは「交流重視グループ」、そして、どちらでもない人たちが「平均グループ」です。
この「非交流重視グループ」の人たちは全体の33%います。全体の約3割というのは無視できない数字です。

中高生向けの居場所はプログラムへの参加や人との交流を中心に設計されていることが多いですが、誰かに話しかけられたりせず、知り合いに合わない居場所でこそ安心できるという人がこれだけいるならば、やはり従来の居場所のあり方を見直す必要もあると思います。
「非交流」を望むのはどのような人たちか?
――非交流型の居場所を望む人たちが全体の約3割という結果は予想通りでしたか?
「秘匿性」と「ひとり志向」を強く望むグループが抽出されることは予想していましたが、ちょっと意外だったのが、非交流重視グループは「被受容性」も高かったことです。一人にしておいてほしい、秘密にしておいてほしいと思っている一方で、ありのままの自分を受け入れてほしいというニーズも強いんですね。
非交流重視グループも人との交流を全く求めていないわけではない。この結果をどう捉えるかはまた後ほどお話したいと思いますが、興味深い点です。
もう一つこの非交流重視グループに特徴的なのが、困難に陥った時に誰にも相談したり助けてもらったりしようと思わないということです。

他にも自尊感情の高さや経済的困難度、不登校傾向など関係しそうなことを聞きましたが、グループで明らかに差が見えたのはこの相談行動のみでした。ただ、ここはちょっと見逃せないところだと思います。
非交流を重視しているから相談しないのか、相談しなかった結果、非交流になっていくのか、相談したけれどもろくなアドバイスをもらえなくて関わることをしなくなったのか、可能性はいくつかありますが、いずれにしても大人と関わるなかで傷ついたり、期待はずれだったりした経験をしている子が他のグループよりも多くいるかもしれないといえます。
こういった子どもたちに対しては、まず秘密にしておくこと、一人でいてもいいと大人の側から保証することが必要なのかもしれません。
交流したくない性格なのか、関係が浅いのか?
――最終的に相談や支援につなげていくことを目指す居場所も多いなか、相談しない傾向の強いグループが全体の3割もいるというのはなかなか難しいですね。
この結果については2つの考え方があります。
一つは中高生を分類すると必ず3割程度は「秘匿性」と「ひとり志向」を重視する層がいるという可能性、もう一つは回答した時期はたまたま非交流を重視していたけれど、今後、平均グループや交流重視グループに移行していくかもしれないという可能性です。
どういうことかというと、「被受容性」の得点に着目すると、非交流重視グループから交流重視グループにいくほど点数が下がっていますね。

この調査だけでは言い切れませんが、例えば、居場所を求めている段階では認めてほしい気持ちが大きい。けれども、人と交流して居場所ができてくると、認められている感覚ができてきて「被受容性」はそれほど求めなくなる。そういう変化の一過程とも捉えられるんです。
――居心地のいいコミュニティに属するようになれば、認められたい気持ちが薄れていくというのはありそうな気がします。そうすると結局、全国の居場所は今後どうしていくのがいいのでしょうか。
もし一定数の人は変わらず非交流を重視するのであれば、現状は非交流型の居場所が非常に少ないので、そうした人たちのために非交流に特化した居場所を増やしていく必要があるかもしれません。
一方、非交流重視グループの人が時と共に中間グループ、交流重視グループへと変わっていくとすると、居場所のなかに非交流的な機能と交流的な機能の両方を兼ね備えておく必要があると思います。
重要なのは、非交流重視グループは被受容性ニーズが高いということです。周囲と関わろうとはしないものの、受け入れてほしい気持ちはあるので、非交流と言ってもずっと何もしてはいけないということではないと思うんです。最初は支援しないことを保証することで、いずれ周囲に助けを求める層に変化していく可能性もあります。何か助けになりたいという支援者にとってはちょっと苦しいところですが、ある局面ではじっと待つことも重要だと思います。

加藤弘通
北海道大学大学院教育学研究院 教授
教授専門は発達心理学。いじめや非行といった思春期ならではの問題とその背景にある発達過程について研究している。著書に『教育問題の心理学:何のために研究するのか?』福村出版など。公認心理師。臨床心理士。
Child Issue Seminar 開催のお知らせ
本記事でご紹介した4,000人アンケート調査についての加藤先生による詳細な報告など、より深掘りした内容をお届けするセミナーを開催いたします。ぜひ記事と合わせてご参加ください。(後日、アーカイブ配信もございます。)
【大阪】2026年10月28日(水) 14:00〜17:00
【札幌】2026年11月26日(木) 12:30〜15:30
会場参加 無料/アーカイブ視聴(資料付き)個人2,000円、団体5,000円
▼詳細・お申し込みはこちら
https://3keys.jp/news/13932/


このコーナーは、オートレースの補助を受けて連載しています。