3keysでは、非交流型の居場所に対する思春期世代のニーズをより詳しく理解するため、中高生を中心に4,000人を対象とした調査をおこないました。本シリーズではこの調査に携わった4名の検討委員の方々に、調査結果や非交流型の居場所の重要性について伺います。
今回の4,000人調査では子どもたちがなぜ居場所を必要としているのか、その背景を探る分析もおこないました。前編に引き続き、分析を担当した北海道大学大学院教育学研究院教授 加藤弘通先生にお話を伺いました。
後編では、発達心理学の観点から研究者として考える思春期世代に必要な居場所についてお話いただきました。

論理的思考が高まると悩みも深まる?
――今回の調査では思春期世代を対象としていますが、思春期というのはどういう時期なのでしょうか?
よく言われるのは不安定な時期、反抗期ということです。事実として、この時期そういう子どもは増えると思いますが、私はそこが第一の特徴ではないと考えています。
反抗したり不安定になったりする背景にはもっと深い変化があって、その一つが論理的思考の発達です。小学校高学年に入ってくると、自分の経験や現実との相違に囚われることなく、自分の思考の流れに沿って考えることができるようになります。
そういった論理的思考が伸びてくると何が起こるかというと「考えることを考える」ことができるようになります。専門的には反省的思考というんですが、自分の思考の仕方自体を考えられるようになってくるんですね。
すると、実は悩みも深まりやすくなるんです。
悩んでいることに悩んでいることに悩んでいる……と果てなく悩んでしまう状態はうつの思考パターンに似ています。論理的思考が高まると、うつ病になることもできてしまうんです。
物事を深く考える力もうつ病になる力も、その裏には論理的思考の発達があります。幼い頃は「親が言ったから正しい」だったのが、親が論理的でないと、それはおかしいと指摘できるようになります。論理的思考のおかげで、子どもは権威から自由になれるんです。だから、この時期の子どもは校則に不満を持ったり、大人のずるさが目についたりと、正しくないことに敏感です。
飛躍的に伸びる内面に言葉が追いつかない
――そうは言っても、子どもの論理はまだ視野が狭いように感じることもあります。そこはいずれ成長していくということなのでしょうか?
思考力が発達する一方でボキャブラリーが追いついていないという話はよく保護者の方から聞きます。何を聞いても「別に」しか言わない。思うことがあっても自分の思考の流れを説明しようとはしないんですね。
保護者の方によくアドバイスをするのは相手をやっつけようとせずに、落としどころを見つけるということです。「色々考えているんだと思うけど、それを言葉にしないと相手に伝わらないからもったいないよね」というふうに、言葉を変えてもらうことが大事なんじゃないかと思います。
僕自身は子どもが思春期の頃はよく「ちょっと書いてみてくれない?」とお願いしていました。そうすると意外とよく考えていることが分かったりします。
支援現場の方も「どうしてそう思ったの?」「どんなことがあったの?」と尋ねることが多いと思うんですが、それも子どもなりの論理を取り出そうとしているんだと思います。
――小さな子どもではないけれど大人にもなりきれていない、難しい時期ですね。
思春期が児童期と異なる点は成長が著しいということです。例えば、身長で見ると分かりやすいですが、第二次性徴の幕開けと共に急激に背が伸びます。

徐々に成長している間はあまり成長を自覚できませんが、自分でもわかるほどの急激な変化なので戸惑うこともしばしばあります。そのため、自分に意識が向きやすく、変化していく自分がとても気になるけれど自分ではどうしようもできない。周囲と比べて自分だけ成長が遅れていると劣等感を持つこともあるなど、非常にしんどい時期だろうと思います。
ただ、この時期にしっかり自分のことを考えると、青年期にアイデンティティの模索というかたちで「自分に何ができるのか」を問うことにつながっていきます。
自意識を外に向けることで広がる世界
――思春期の見え方が少し変わってきたところで改めて、思春期世代の居場所はどうあるべきか、加藤先生の見解をお聞かせいただけますか?
まず、非交流重視グループが全体の3割を占めていたという結果を受けて言えるのは、非交流重視グループかそうでないかが個人差だとした場合は、やはり非交流型の居場所が必要だということです。従来は交流型の居場所が主流でしたから、ニーズの違いに応じて多様な居場所が用意されるべきだと思います。
もし、非交流重視グループが交流重視グループへの変化する手前の段階なのであれば、居場所運営のメニューを増やしていただく、利用し始めたばかりの子どもには非交流を保証するような形でプログラムを組むといったことも必要になってくると思います。
非交流を重視するのが個人差によるものなのか、あるいは過渡期的な形態なのかを知るのには追加調査が必要ですが、追加調査をせずとも現場の感覚でどちらかを確認していくのもよいと思います。
それから、これは個人的に思っていることなんですが、思春期・青年期向けの支援プログラムを組む時には、外側への視線を持ってもらうことも大事なのではないかと考えています。
例えば、進路を考えるにあたって自分が本当に何をやりたいのか心の声を聞いてみようというようなプログラムは多いのですが、思春期は放っておいても内側に意識が向いていきます。その上、悩みを深めるような思考力もついてきているので、うつっぽくさせてしまうこともあると思うんです。ある局面では自分の内側を見るアプローチも必要かもしれないですけど、もっと周りに目を向けてもらうような働きかけもあってもいいと思います。
中学校で授業をすることもあるんですが、そういう時にすごくウケるのが先生たちが中学生だった頃の悩みの話です。終わったあとには必ず「悩んでいたのは自分だけじゃないと知って安心した」という言葉が聞こえてきます。
子どもたちって普段あんなにおしゃべりなのに、胸に秘めた悩みや孤独感は誰にも言ってないんですよね。同じような孤独を感じている人は周りにもたくさんいるし、先輩たちもそうだったと知ってもらうのもいいのかなと思います。感受性の高い子だったら文学や哲学を通じて、何十年、何百年も前の人も同じように悩んでいたと知ることができます。
居場所の話からはちょっとそれるかもしれませんが、自分に向いていた意識を広い世界に向けていくアプローチも大事なんじゃないかと思いますね。

加藤弘通
北海道大学大学院教育学研究院 教授
専門は発達心理学。いじめや非行といった思春期ならではの問題とその背景にある発達過程について研究している。著書に『教育問題の心理学:何のために研究するのか?』福村出版など。公認心理師。臨床心理士。
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【大阪】2026年10月28日(水) 14:00〜17:00
【札幌】2026年11月26日(木) 12:30〜15:30
会場参加 無料/アーカイブ視聴(資料付き)個人2,000円、団体5,000円
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https://3keys.jp/news/13932/


このコーナーは、オートレースの補助を受けて連載しています。