認定NPO法人3keys(スリーキーズ)

教員の多忙化の現状とは?〜子どもに寄り添うのは難しい?

クラスの人数で見る教員の負担

日本社会において学校(特に義務教育段階の小中学校)は、学習だけでなく、基本的な生活習慣や団体行動などを子どもに身に付けさせることも期待されてきました。課外活動の場でもあり、学校外での子どもの生活態度や安全についても一定の責任を負うという認識が一般的です。

もちろん、いじめの多くが学校現場で起き、また学校での人間関係が関わっている以上、その解決や防止に学校が無関係ではいられません。しかしそこで働く教職員も生身の人間であり、私生活もあります。インターネットやスマートフォンの普及で、いじめの形態も多様化し見えにくくなっています。その中で教員がどこまでの役割を果たすべきなのか、責任を負うべきかという問題も浮上してきています。ここでは、それを考えるための材料として、学校の先生たちの置かれた状況を見ていきます。

まず、最もよく引用される平均学級規模(1クラスあたりの生徒人数)を見てみます。OECD(経済協力開発機構)の2018年の国際比較では、日本は小中学校ともにOECD平均を上回っています。小学校はOECD平均が21.1人なのに対して、日本は27.2人とOECDの中で2番目に大きい規模になっています。中学校は、OECD平均が 23.3人なのに対して、日本は32.1人と、コスタリカに次いでOECDの中で2番目に多くなっています。

1クラスあたりの生徒人数の国際比較
*出典1

欧米を中心とした先進諸国では学級の少人数化が進んでいます。一方で日本の場合は、学級編制の上限は、小学校1年生で35人、小2から中3で40人と定められています。2011年に小学校1年生が35人に引き下げられましたが、小2から中3は、1980年以来40人のまま変化がありません。2025年までに35人学級に段階的に戻していく方針が発表されましたが、それでも2011年水準に戻るだけで、OECDの平均からは遠く離れたままです。

仕事時間で見る教員の負担

働き方の面ではどうでしょうか。OECDの国際教員指導環境調査(2018)によると、日本の教員の1週間の仕事時間は、小中学校ともにOECD参加国中最長です。中学校では週に56時間と、OECD平均の1.5倍もあります。

教員の1週間あたりの仕事時間
*出典2

その内訳を見ると授業時間も平均を上回っていますが、顕著なのは「課外活動」「事務業務」「授業計画準備」に費やす時間の長さです。課外活動は中学校、事務業務は小中学校、授業計画準備は小学校でそれぞれ、参加国中最長です。その一方で、教員が自らの職能開発に使う時間は参加国中最短という現状です。日本の先生が、いかに授業以外の職務に追われ、学習面の充実が後回しになっているかを端的に表しています。

2018年に文科省が公表した教員勤務実態調査(2016年度確定値)では、小学校、中学校共に週に10時間以上の残業を学内でしている人が大半を占める実態が明らかになりました。しかもこれはあくまで「学内」での勤務であり、自宅で業務する風呂敷残業は含んでいません。小学校の教員の3割、中学校では6割の教員がいわゆる「過労死ライン」とされる月80時間以上の時間外労働をしているとの指摘があります。多くの学校にはタイムカードなどの勤怠管理の仕組みはありません。

教員の1週間あたりの学内勤務時間
*出典3

公立小学校の倍率は過去最低水準に

待遇面の指摘もあります。OECD諸国では2005年から2019年にかけて、勤続15年の教員の法定給与はOECD平均で5−7%増加しました。一方で日本は8%の減少です。日本自体が経済成長から取り残された面もありますが、国内の学校教員統計調査で見ても、中学校の教員の月額給与は2020年に平均で34万200円と、2004年度に比べて約3万5300円減少。小学校は32万6800円で、5万2600円減っています。また公立の小中学校の教員には残業代はつきません。こうしたことから学校を「ブラック職場」とする声も上がっています。

長時間労働は日本社会全体の問題であり、教員だけに限ったものではありません。しかし残業代が支払われ、また徐々に働き方改革などが進みつつある民間企業と比較して、学校の制度改革が十分に進んでいるとは言いがたい状況が続いています。

上記の国際教員指導環境調査でみても、日本の教員の人手不足感は強いと言えます。他の職業に比べ給与は低いとは言えませんが高いとも言えません。そこに共働き世帯の増加による学童保育などの保育機能の充実、PTAを含む家庭とのやりとり、スマートフォンやインターネットに関する啓発などの業務の必要性も高まっています。そうした中で、いじめなどが起きないように気を配ることを求められています。

公立小学校の教員の採用試験の倍率は、19年度に過去最低の2.7倍となりました。学校の先生は今や「人気職種」とは言えず、なり手不足の深刻化とそれに伴う質の低下が問題視されています。 TALISというOECD国際教員指導環境調査によると、日本は特別な支援を要する子どもへのサポートや、生徒と過ごす時間が足りないと回答する教員がTALIS平均に比べて非常に高くなっています。日本の教員の負担の重さ、働き方、成り手不足の問題は、最終的に子どもたちと向き合う余裕のなさにつながります。不登校やいじめ等が発生しても十分に対応する余力が残っていなかったり、更に深刻な場合、教員自身が体罰や不適切指導といった虐待的な行為につながってしまいます。

教育資源の不足感
*出典4

繰り返しにはなりますが、子どもを預かり、公に教育をする教員や学校がいじめなどの問題に無関係ではいられません。しかし、そうした問題に十分に対応しづらい仕組みや環境があるならば、それを改善せずに問題があった際にクラスなどの担任個人を責めても何も解決はしません。

教員には何をしてほしいのか、どんな人になってほしいのか。そしてそういう人に教鞭をとってもらうために、どんな報酬や仕組みが必要なのか。自分の子どもを預ける前提で、より深い議論が必要と言えます。

白書−日本の子どもたちの今

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