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【原田直樹先生インタビュー|前編】 話し合うほど、解決から遠ざかる?──不登校をめぐる「本人・親・学校」のすれ違い

2024年度、不登校児童生徒数は小学校・中学校を合わせて35万3,970人*1と過去最多となりました。不登校の児童生徒数は12年連続で増えており、小中学生の26人に1人が不登校となっています。いま、子どもたちはどのような状況に置かれているのか、福岡県立大学准教授で同大学の不登校・ひきこもりサポートセンターで支援者として従事し、現在も教員スタッフを務める、原田直樹先生に聞きました。

*1  文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」

「行かなくていい」が広がる一方で学校に残るしんどさ

――不登校がここまで増えた背景にはどのようなことがあるのでしょうか?

教育現場も含めて「無理して学校に行く必要はない」という風潮が出てきたことは一つ考えられますね。
2016年に「教育機会確保法*2」が成立しました。これは多様な場での学びを認めるもので、学校に行くことがすべてではないことが示されました。さらに令和に入ると文部科学省から通知*3が出され、学校を休むことへの抵抗感は薄れてきていました。
そうした中、コロナ禍の休校措置や社会不安などの影響もあり、不登校が急増しました。今はもうこのコロナによる影響は非常に落ち着きはじめていますが、それでも小・中で35万人、高校も入れれば40万人の子ども等が不登校です。
学校の中に、それだけしんどい状況があるんだということは見てとれるかと思います。

*2 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律
*3 「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日

――理解が広まったことで「学校に行かない」という選択がとりやすくなった一面もあるんですね。

そうですね。一方で、学校内での人間関係が厳しい状況になっているという現実もあります。実は、不登校だけではなく、いじめや暴力などの問題行動も増加していて、2024年度は小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数、いじめの重大事態ともに過去最多を更新しました*1
学校の中が非常に生きづらい、厳しい環境になっていることは間違いないです。

不登校支援は「原因探し」では解決しない

――不登校になるきっかけは、やはり校内での人間関係になってくるのでしょうか。

きっかけとしては多いですね。中学生になってくると人間関係を理由にしての不登校も多いんですけれども、学習面での問題も出てきます。
ただ、単一の理由で不登校になることは非常に少ないです。「人間関係で」「勉強についていけなくて」といった理由だけでなく、さまざまな要因が複合的に絡みあい、年齢を重ねるほど、その複雑さは増していきます。

文部科学省が2021年におこなった調査*1でも、不登校・ひきこもりサポートセンターがかつて不登校だった生徒を対象におこなった追跡調査*4でも、不登校になったきっかけを本人に尋ねると、学校生活に関するものに続いて、「分からない」「その他」「特に思い当たることはない」といった答えが上位にきます。

図1 最初に行きづらいと感じ始めたきっかけ
*4 『先生のための不登校対応サポートブック』原田直樹 著(中央法規出版,2025)p.24を元に3keys作成

思春期に入ると、自分の成長・発達につれて、色々なことが見えてきますよね。理由は一つではないし、「なぜ?」と聞かれても悩みを言葉で説明することは難しいので、「分からない」という言葉になってしまうのかもしれません。

――でも、原因が分からないと、対策もしづらいですね。

一般的な対人援助の世界では、原因を明らかにしてそれを解決することで、問題を改善していくのが普通です。ただ、不登校支援においては原因を追求しても学校に行けるようになるとは限りません。
中にはやり取りしているうちにスーッと学校に戻っていく子もいるので、子どもの状態を理解するために話を聞くのはいい。ただ、子ども自身も原因が分かっていなかったり、時間とともに学校に行けない理由も変化していったりすることも多いので、行けなくなったきっかけや原因にのみアプローチしてもメリットは大きくないんですね。
あれこれ聞いて対応しても改善しない時に「なぜ学校に行けないのか」と聞けば、子どもを追いつめてしまうこともあります。
学校の校舎を見ると行動が止まるとか、昇降口に立つと涙が出るとか。そういった時期はまず刺激を控えて、そっとしておくことが必要な場合もあります。でも、不登校が続くなかで本人としては関わってほしい時期もある。その辺は大人の側が状態を見ながら調整してあげる必要があります。

学校に行けない期間を誰がどう支えるか

――子どもの状態に合わせることが大事なんですね。とはいえ、「行ける時に行く」といった対応は、保護者の仕事との兼ね合いなどを考えると現実的には難しそうです。

子どもだけで登下校させるのはリスクがあるので、最近の学校では、子どもを一人で早退させたりはしませんよね。
すると早退したくても、親が来るまで子どもはいるのがつらい空間でずっと待たないといけません。そうなればもう次は「学校に行かない」となってしまうことだってあります。安全面を考えると仕方がない面はあるけれども、学校と家の間にもう一つ何かあるといいなとは思いますね。例えば、放課後児童クラブ(学童保育)を開ける時間を少し早めて、不登校の子にそこに来てもいいというような対応をとっている例もあります。

「不登校離職」など、親の働き方への影響については最近、注目が集まりはじめています。
ある調査では、不登校によって働き方に影響があったという保護者は半数を占め、離職は15.6%にのぼりました。別の調査*5でも不登校をきっかけに世帯収入が減った家庭は3割を超え、約4割が「支出が増えた」と答えています。これはものすごく大きな数字だと思うんですよね。

*5  オンラインフリースクールaini school調査

――親の負担は大きいですね。すると、不登校支援はやはり学校で取り組んでいくべき問題なのでしょうか。

現在は主に学校で支援を担っていますが、学校側が支援することが難しい場合もあります。
我々の追跡調査などでは、不登校になったきっかけを本人と親、そして先生に聞いたんですが、先生側はきっかけとして家庭や本人の問題を多く挙げる一方、親の回答は学校の問題に集中していました。そして、本人は先ほどもお話ししたように「分からない」と感じていることも多く、三者の間でギャップがあるのです。
解決したい思いは同じでも、不登校の捉え方にズレが生じているので、話し合っているうちに対立構造に陥ることがあるのです。そうした構造のなかで、先生が一人で支援するのは非常に難しいんです。

図2 先生、保護者、子どもが考える不登校の要因等のギャップ
『先生のための不登校対応サポートブック』原田直樹 著(中央法規出版,2025)p.18・25を元に3keys作成
――たしかに、学校が原因で行けないと思っていたら、先生の言葉は届きにくいかもしれないですね。では、子ども達自身は学校に行けないことをどう思っているのでしょうか。

「行けるものなら学校に行きたい」という子は多いです。
学校は所属欲求を満たし、生徒であるというアイデンティティを支える存在でもあるので、学校とのつながりが途切れてしまうことへの不安感があります。
ここまで不登校が増えてもやっぱり、大多数の子どもは学校に行っています。みんなと同じように行けないことを引け目に思っている子も多いですね。
また、年齢が上がってくると、将来への不安も大きくなります。中学生ぐらいになれば学校に行かないことがデメリットになる場合があるということも分かっていますから、不登校になったら終わり、「人生つんだ」みたいなことを言う子もいるんですね。

今はフリースクールやオンラインでの学習指導も増えてきていて、学ぶための選択肢はいろいろあります。ただ、それが知られていなかったり、受け入れられてなかったりすることもまだ多くあります。学校に戻らなくてもいいという選択肢を誰がどう伝えるか、子どもが学校以外で学ぶ選択をした時にどう支援していくかはこれからの課題ですね。

原田直樹
福岡県立大学看護学部准教授
社会福祉士、精神保健福祉士
障害児・障がい者福祉の現場で支援業務に従事した後、福岡県立大学不登校・ひきこもりサポートセンター専門研究員として、不登校・ひきこもりの子どもや家族、学校等の支援に携わる。その後、同大学看護学部養護教諭養成課程の教員に着任し、現職。著書に『子どもの思いとかかわり方がわかる 先生のための不登校対応サポートブック』(中央法規出版,2025)

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