不登校の生徒を支えるための制度や資源は増えてきていますが、不登校の児童生徒数は一向に減りません。子どもが学校外で学ぶという選択肢もとれるようになっていくためには何が必要なのでしょうか。福岡県立大学准教授で同大学の不登校・ひきこもりサポートセンターで支援者として従事し、現在も教員スタッフを務める原田先生に聞きました。
→ 【前編】なぜ話し合うほど、解決から遠ざかるのか──不登校をめぐる「本人・親・学校」のすれ違い

整いつつある支援の仕組みが活用されない現状
――保健室登校やフリースクールへの通学など、教室以外での学びも広がってきていると聞きますが、実際、現場の先生達にはこういった情報は伝わっているのでしょうか。
これが、なかなか行き渡っていないようです。
実は2024年度、不登校の児童生徒数は過去最多となりましたが、新規不登校の数は9年ぶりに減少に転じました。増加率も近年では最低だったんです。新規不登校を生まないための取り組みとして公立小中学校への校内教育支援センターの設置率が5割を超えましたので、これがちょっと役に立ち始めてるのかなと思います*1。
ただ、担任の先生の中には、その機能を十分に把握していない先生もいると思います。また、問題意識をもった一部の教育委員会が管内の資源マップを作って学校に配ったりもしているんですが、それも結局、管理職や生徒支援担当の先生のところで止まっていて、担任の先生まで行き渡っていなかったり。この制度についての研修をしないといけないんだけど、先生たちが忙しすぎて、研修をする時間がないんです。
すると問題なのは、情報がきている支援担当の先生は「ここでいいんだよ。ここであなたはゆっくり過ごせばいいんだよ」と言う一方で、担任の先生は教室以外の行き先を知らないので、やっぱり教室に戻ってくるのがゴールだと考えていたりする、先生によって考えや言うことが違うなど、学校内で組織的な動きができていないという不具合は聞こえてきてますね。
*1 令和7年 文部科学省「令和7年公立小中学校の校内教育支援センター設置率」
スペシャルサポートルームなど、自分のクラスに入りづらい生徒が落ち着いた空間の中で自分に合ったペースで学習・生活できる環境として学校内に設置。自分のクラスとつなぎ、オンライン指導やテストなども受けられる。
活用されない支援。その陰で保護者が抱え込むもの
――どの先生にあたるかで対応も違うとなると、保護者も学校任せにできないですよね。各家庭ががんばるしかないということでしょうか。
そうなってしまいますよね。学校に頼れないと保護者も「自分が何とかしなくちゃ」という意識が強まるでしょう。
ですが、保護者も支援の対象と考えたほうがいいんです。不登校が長引くなかで、保護者が抑うつ状態になってしまうということは珍しくありません。
不登校になると、子どもの不登校の問題が親自身の問題になってしまって、親子関係が共依存*2の関係になりやすいんですが、学校を頼れない、他にバトンを渡せないことで、その関係がさらに固着していってしまいます。

3keys作成
本当は、そこに関わる第三者としてスクールソーシャルワーカーなどは適任だと思うんですが、まだまだ過渡期なんですよね。量も質も雇用条件も全然十分とは言えないので、人材育成を図っていくことが必要です。
*2 親子や夫婦、恋人など特定の相手との間で起こる不健全な関係性。相手にのめりこみ過ぎて別の個人としての境界線が失われてしまい、束縛や支配など相手をコントロールするようになってしまう。元々はアルコール依存症の患者と家族の関係性の問題として指摘されていたものだが、不登校では特に社会から育児の役割を期待される母親と子どもがこの関係に陥りやすい。
子どもに応じた学びをチームで保障する
――親も先生も大変で、新しい人材も育っていないとなると、誰が不登校の子を支えていけばいいのでしょうか。
保護者も教員もすでに疲弊していますので、まずは疲弊させない取り組みが必要ですよね。そのためには負担を分散させるというか、チームで関わることが大切だと思います。
学校だけでなく、途中からフリースクールが入る、あるいは校外教育支援センターや居場所支援のNPOが入る。そんなふうにして、子どもの居場所を保障するチームができれば、親一人でがんばらなくていいですよね。
学校でも、まず管理職が役割分担と対応のフローを組織的に明確にしていれば、現場の先生も動きやすいはずなんです。
例えば、全体的なマネジメントはスクールソーシャルワーカー、心理的な問題や保護者の相談があった時はスクールカウンセラー、学習に関するマネジメントは担任を中心とした教育チームで担当して、この定例会議で情報共有していきましょうといった枠組みを示せている学校では上手くいっています。
――新たに施設を整備したり人材を育成したりしなくても、今あるものを活用していけば、まだまだできることがあるんですね。
放課後児童クラブ(学童保育)はもうどこの学校もやってるので、そこの時間帯を変えて運用するとか、例えば、放課後児童クラブの支援員さんって一日2〜3時間の雇用の方も多いんですよね。でも、中にはもうちょっと働きたいと思ってる人もいる。だったら、例えばお昼から来てもらって、不登校の子どもたちの支援もしてもらうようにすれば居場所が1個できるんですよね。
このアイディアはぜひ広げてほしいんですけども。
――これまで別々に子どもに関わっていた組織が連携してやっていくとなると、大人が意識を変えていく必要もありそうですね。それぞれ何を目指していけばよいのでしょうか。
2023年に出された「COCOLOプラン」*3には、「誰一人取り残されない学びの保障を社会全体で実現します」と書かれていますが、そこに尽きると思います。

文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」p.2より
その子にあった学びというものがやっぱりあるんですよね。学びというのはいわゆるお勉強だけではなくて、子どもによっては一人でラーメンを作れるようになるっていうのも学びになり得ます。それが将来のいわゆる社会的自立につながるのであれば、それはもう大きな学びなわけです。
いま必要な学びって子どもによって全然違うと思うんですよね。個別最適化された学びをいろんな場所で保障していくんだということを社会全体で共通認識として持つことはすごく大事です。
学ぶ場によっては集団で分数の勉強みたいなところまではできないかもしれない。でも、代わりにこれはできるよっていうような。それも含めて選択だと思うんですよね。
*3 文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」
――今は働き方も多様化しているので、集団生活ができなくても生きていける方法はたくさんあるんだと教える大人がいてもいいですよね。
私が言うのも変ですけど、もう今どき大学に行くのが正解ではない時代ですから、どこに行って何を学びたいのか、その学びをどう生かしたいのかを考えているのであれば、学びの場がオンラインであろうと、民間のフリースクールであろうと構わないと私は思います。
――最後に、これから社会はどう変わっていくべきかについて聞かせてください。
長期欠席*4でみると、実は今回、小中高で60万を超えたんですね。これってものすごい数字なので。もう誰が不登校になっても不思議じゃない。不登校は特別なことでもないし、子どもが特別弱いわけでもないし、家庭に特殊な問題があるわけでもないんですよ。それを社会全体でまずはきちんと認識することが必要ですよね。
あとはやっぱりいまだにゴールが学校、教室になっていることが多いので、ここは変わるべきだと思います。いろんな場所でいろんな学びができるので、今のその子にとって必要な学びが何なのか、その学びは教室じゃないと本当にできないのかをしっかり考えていかないといけません。
それを担任の先生とか不登校支援の担当者が一人で考えるっていうのはもう限界があるので、そこはチームが必要ですよね。
選択肢があるって、やっぱり豊かな社会の象徴だと思うんです。大きな話なんですけど、選択肢というものをきちんと整備する、選択できるための支援をするっていうことが必要だと思います。
*4 年度間に30日以上登校しなかった場合に長期欠席となり、そのうち「病気」や「経済的理由」ではなく、何らかの要因・背景により登校していない場合は「不登校」として計上される。
文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査-用語の解説」

原田直樹
福岡県立大学看護学部准教授
社会福祉士、精神保健福祉士
障害児・障がい者福祉の現場で支援業務に従事した後、福岡県立大学不登校・ひきこもりサポートセンター専門研究員として、不登校・ひきこもりの子どもや家族、学校等の支援に携わる。その後、同大学看護学部養護教諭養成課程の教員に着任し、現職。著書に『子どもの思いとかかわり方がわかる 先生のための不登校対応サポートブック』(中央法規出版,2025)
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