認定NPO法人3keys(スリーキーズ)

誰が、どんな虐待をしている?~顕在化する「面前DV」と心理的虐待

どんな虐待が増えている?

2019年度、児童相談所に寄せられた19万件以上の相談の内訳をみると、心理的虐待が56%で過半を占めています。次いで身体的虐待が25%、ネグレクトが17%で、性的虐待は1%でした。この割合はこの10年で大きく変わり、2009年度では心理的虐待は半分以下の23%でした。対して、身体的虐待は39%、ネグレクトが37%で、性的虐待は3%でした。割合でみれば、身体的虐待やネグレクトから、心理的虐待へ移ってきていることがわかります。ただ性的虐待を除くいずれの類型も、実数としては大幅に増えています。なお、残念ながら、性的虐待の発見・相談件数はほとんど増えておらず、横ばいの状況で、性的虐待の声の上げづらいさは様々な専門家より問題視されています。これについてはまた「性被害」のカテゴリで後述いたします。

*出典1

次に、児童相談所に寄せられた相談の経路(誰から相談があったか)を見てみます。19年度では、警察等がほぼ半分。家族親戚が8%、近隣知人が13%、学校が8%でした。これが09年度では警察等が3分の1以下の15%で、家族親戚が17%、近隣知人が17%、学校が12%でした。警察経由での相談が明らかに増えていることがわかります。

*出典2

これは、児童がいる前での夫婦間のDV(面前DV)が顕在化したことによる結果との見方が大勢です。警察庁によれば、配偶者からの暴力事案等の相談件数は2019年に約8万2000件。10年前の3倍近くになっています。配偶者にDVを受けた人が警察に相談し、それに伴ってDVを目撃した児童が心理的虐待を受けていたことが発覚するという構図です。

*出典3

家庭での虐待加害者は9割が実父母

虐待における、被害児童と加害者の関係を見てみます。
「福祉行政報告例」によると、2018年度の児童相談所の虐待相談対応件数約16万件のうち、児童相談所のまとめで「主な加害者」として最も多かったのは「実母」で47%を占めます。次いで「実父」が41%で、実の父母で9割を占めます。そのほかの1割は養父母や継父母、親類などになります。推移をみると、実母の占める割合がこの10年で13%ほど減っているのに対し、実父の割合が増えています。

*出典4

これらは児童相談所、つまり、福祉側が把握している虐待のうちの加害者の傾向になります。一方で、警察が関わり、刑法や児童福祉法などの違反が認定された虐待の統計もあります。警察庁の「犯罪白書(2020年版)」によると、児童虐待にかかわる犯罪で検挙された人数は2019年に2024人でした。そのうち、実父や養父・継父などの「父親等」は71.5%を占めます。一方の「母親等」は28%で、犯罪で検挙された数では父親等が母親等の2.5倍あることになります。

*出典5

より詳しく見ていくと、加害男性と女性では大きな違いがあります。まず男性の場合、加害者となるのは実父が63%で、養父や継父、母親の内縁の夫などが37%います。検挙された虐待の8割近くが「傷害」および「暴行」ですが、その71%を男性が占めています。また「強制性交」「強制わいせつ」の98%が男性です。強制性交では3分の2、強制わいせつでは6割が実父以外の男性が加害者になっており、女性加害者との大きな違いになっています。

一方、女性の場合は加害者の95%が実母です。女性のほうが実の親が加害者になる割合が高いのは、離婚などの際に女性が子どもを引き取ることが圧倒的に多いことが影響していると考えられます。そして「殺人」および「保護責任者遺棄」にいたるケースは男性より女性の方が高く、乳幼児に多い虐待死もここに含まれます。この統計には無理心中や出産直後の事案が含まれているため、経済的理由などから我が子を殺害・遺棄したり、母子で心中したりしてしまったケースが女性の虐待件数を引き上げています。

社会問題化する「保護者以外」の虐待

繰り返しになりますが、児童虐待防止法の定義により、こうした犯罪白書などで取り上げられる「虐待」は加害者がすべて「保護者と認められる者」となります。加害男女とも「その他」に含まれるのは祖父母やおじ・おば、父母の知人友人などであり、教員や保育者は含まれていません。保護者以外による虐待(その疑いを含む)がどれほどあるかは統計上把握できませんが、ただ子どもに関わることが多い職業――教員や保育士などの虐待に類する行為は、近年、社会問題になっています。

教員の処分について公表している文部科学省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」によると2019年度、わいせつ等の行為で処分を受けた公立小中高の教員は273人。前年度より9人減りましたが過去2番目の多さでした。被害者は自校の児童生徒・卒業生が半数近くを占めています。

*出典6

さらに問題をはらんでいるのは「体罰」です。体罰に関わる行為で処分を受けた公立小中高の教員は19年度に550人でした。近年は減少傾向にありますが、この数値をそのまま「学校での体罰が減っている」とは考えにくい面もあります。過去の推移をみると、2013年に公表された2012年度調査で、体罰で処分された教員数は5倍以上に急増しています。

*出典7

2012年末、大阪のバスケットボールの強豪高校でキャプテンだった部員が自殺しました。顧問の教員は指導を名目に日常的に部員に流血するような暴行を加えていたことが発覚し、大きな社会問題となりました。そうした状況を受け、文部省は体罰の緊急調査を実施しています。12年度調査はそうした状況であり、翌13年度もそこからさらに増加しています。

社会問題化したことで世間の目が厳しくなり、実際になくなった体罰があることも確かでしょう。しかし社会問題化したことで一気に増えた数字は、「きちんと調べなければ、見過ごされる行為が多くある」可能性を強く示唆しています。

学校社会の閉鎖性と、それに関わる調査の信頼性については「いじめ・不登校」の「不登校やいじめはどれくらいある?~文部科学省の資料では見えない実態」でも触れています。ここでは、カウントされているのは処分に至った件数だけであるということ、「体罰」での教員の処分件数が再び大阪での事件前の数値に近づいてきているということ、そして何より殴って怪我をさせるといった行為は体罰以前に犯罪だということを指摘しておきます。

子どもに関わる職業は教員だけではありません。保育士やベビーシッター、習い事や塾の指導者、医療関係者など様々です。特に保育士は近年、園内での虐待に関する報道が増えてきていますが、全体の件数などの実態は明らかではありません。東京新聞の2020年8月の報道を引用します。

保育所内で起きた園児への暴言や暴力、放置など虐待が疑われる「不適切保育」について、厚生労働省が本年度(編集注:2020年度)中にも初の実態調査をする方針であることが分かった。待機児童対策で保育施設が急増する中、保育士らが園児をたたいてけがをさせたり、怒鳴ったりする事例が発覚しており、国は市区町村の対応状況の把握や虐待防止策のマニュアル作成を目指す。

東京新聞 2020年8月

共働きの増加で都市部を中心に保育ニーズが急激に高まる一方、保育士の人手不足は深刻で人材育成が追い付いていません。また被害者である子どもが就学前であり、自分で被害を訴えることが極めて難しいことから小中学校よりも密室化しやすいという特性もあります。少しでも早い実態の把握と対策が求められています。

もっと言うと、児童相談所や児童養護施設、里親家庭、我々のようなNPOなど、家庭や学校などで既に傷ついた子どもを預かる福祉の場での虐待もゼロではありません。子どもが育ついかなる場所でも虐待的行為がなくなることを目指すべきです。

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