認定NPO法人3keys(スリーキーズ)

【4,000人調査インタビュー②|保志幸子氏-後編】交流を主にしない居場所は何を目指すのか

3keysでは、非交流型の居場所に対する思春期世代のニーズをより詳しく理解するため、中高生を中心に4,000人を対象とした調査をおこないました。本シリーズではこの調査に携わった4名の検討委員の方々に、調査結果や非交流型の居場所の重要性について伺います。

人とのつながりがひとつの要素でもある居場所で、あまり交流を求めていない子どもたちとどのように関わっていくのか。一見矛盾する言葉のようにも思える「非交流型の居場所」のあり方についての解像度を上げていくべく、前編に引き続き、元港区子ども家庭支援センター所長 保志幸子氏にお話を伺いました。

何かしてあげたい気持ちと上手く向き合うには?

――静かに過ごしたいというニーズは理解できるものの、どこまで関わっていいのか悩んでしまいそうです。何かしてあげたい気持ちにどう折り合いをつければよいのでしょうか。

思春期は、積極的な介入が必要な場合は別として、子どもが発するサインを捉えて対応することが基本です。支援者である大人がもしそこで待つことができず悶々とするとしたら、一旦、自分の問題を考えてみてもいいいと思います。

福祉現場の職員、特に相談業務をしている人は自分の課題を整理することが大事です。自分自身の親との関係や、パートナーや子どもとの関係で問題を抱えていると、目の前の子どもにそれを重ねて見てしまうことがあります。そこをしっかり線引きするには自分に向き合う時間をとって、問題を整理しておくことです。困難な問題の中にいる子どもが発するものを自分の問題とまぜこぜにしない冷静な感性を持つ努力が必要です。

それからもう一つ、子どものことは勉強しないと分からないです。私もこれまでたくさんの相談と向き合ってきましたけれども、いまだに新たな問題に驚かされます。子どもの発達の課題や子どもの心理に関しては勉強し続けることが大事です。そうすると自分の引き出しも増えて許容範囲が広がるので、子どもの小さなサインへの理解度も高まるんですね。例えば、会うたびに髪色や服のスタイルが変わる子や同じ話を何度もする子、必要以上に笑顔で話しかけてくる子……その心を冷静に見られるようになる。そうすると、子どもに対して何か言いたい気持ちを抑えながら子どもと接する意味が分かってくるんじゃないかと思います。

――ちょっとした親切心みたいなものだけではなく、かなりの鍛錬が必要ですね。

もちろん、そんなに専門性が高くなくても、そこにいる人がふわっと受け止めてくれるみたいなこともすごく大事です。素人感みたいなものが人を安心させることもあります。子どもが求めているのは3,000人を手がけたベテラン医師ではなく、自分の心の速度や温度に合わせて寄り添ってくれる人。だから、新人さんでも全然かまわないんです。鍛えておくことは必要なんだけど、バリバリにその学習や訓練をアピールするのは違うと思います。

交流を求めない子どもとの関係のはじめ方

――改めて、非交流型の居場所では、どういったことが大事になってくるのでしょうか。

居場所には場所と人が必要で、場所に関しては前編でもお話したように「そのままのあなたを受け止める」というメッセージが表れていること、人に関しては先ほどお話したように冷静な感性で見られるような訓練が大事です。

それから、子どもは大人のことをよく見ているという意識も必要だと思います。
辛い経験をしてきた子どもほど感覚が研ぎ澄まされていることが多く、自分がどう見られているのかを敏感に察知します。本人が表現することは少なくても、言葉ではない形でみんな伝わっています。あの人は自分を見ずにずっと携帯を触ってるとか、記録ばかりしているとか、そういうことは絶対見てますから。

あくびもしちゃいけない、みたいにピリピリする必要はないんです。ただ、支援者の言葉以外のしぐさや些細な行動から、自分がここにいてもいいか、この人はどんな人なのかを確かめている子どもがいることは分かっていてほしいですね。

居場所へ来るというのは決して簡単なことではないんです。これは児童館の大人の利用者の方からお聞きしたことですけど、初めて来館するまでに入口まで来て中に入るのをやめて帰ったことが3回あった、と。大人でも新しい施設に足を踏み入れるのは緊張します。まして子どもであれば、より不安も大きくなりますよね。
目の前に来るまでの葛藤も想像して受け止めてあげてほしいなと思います。

目に見える結果が求められる時代に見失ってはいけないもの

――結果や数字を求められる時代です。子どものサインが見えるまで待つことは何もしていないように見えてしまう部分もあると思います。非交流型の居場所づくりに携わっている方へのアドバイスや今後の居場所づくりへの期待などがあればお聞かせいただけますか?

思春期の、しかも誰にでもわかりやすい交流活動を主目的としない居場所に目を向けるというのは、長い児童福祉の歴史の中でやっとここまできたという気がするんです。来所人数や訪問頻度などでは表しにくいけれど、思春期には非交流の場所と時間がすごく大事だということがやっと見えてきて、そこに力を注ごうという時代になってきたんだと思います。

児童福祉はこれまでに数を合わせていくのが大変な時代もありました。たとえば、保育園の待機児童問題の解決には長い時間がかかって、私はかつて道を歩く妊婦さんを見るたびに「この赤ちゃんとお母さんのために、どこか保育園を建てられる場所はないか」と瞬間的に考えてしまう時期もありました。
でも今やっと、児童福祉は思春期の子どもが心に抱えているものをどうやって受け止めるかという高度な問題に挑戦できるようになったんだと思います。

行政の事業はみなさんの税金で実施するので、根拠が必要なのは当然のことです。もし居場所をつくることになったら専門家を含む委員会を作ってご意見を伺って、さらに子どもにもメンバーになってもらって意見をもらって、それを公表しながら進めていく手法が丁寧でいいと思います。

どうやって成果を表すかというのも最初は難しいと思うんですけど、5年ぐらいすると、同意のもと利用者本人に意見を言ってもらうこともできるはずです。時が味方をする時が必ず来るので、今回の調査結果を含めて大勢の中高生が求めているというところに自信を持って続けていってほしいです。

――しばらくすれば子どもたちが自分の言葉で意義を語ってくれるかもしれないというのは希望がありますね。

思春期って大人から最も近いのに、大人になってしまった人には一番見えないような不思議な世代です。「これからどうなっていくんだろう」って思いながら見守っていた子どもの気持ちを知る喜びはひとしおだと思うんですね。もちろん、みんなに向かって分かりやすいことを話せるということだけが人の完成形ではないですよ。

でも、実際に利用していた子どもの発言はインパクトがあります。非交流型の居場所が何を目指しているのかを分かってもらうには利用者本人発信みたいなものも目指していけるといいですよね。
“元”子どもと”今”の子どもと一緒に未来を夢見て居場所をブラッシュアップしていくことができるといいですね。

保志幸子 
元港区子ども家庭支援センター 所長

現こども家庭審議会児童福祉文化分科会専門委員。元港区児童相談所児童相談課長、港区子ども家庭支援センター所長。元特別区職員研修所教務第2課長・講師


Child Issue Seminar 開催のお知らせ

本記事でご紹介した4,000人アンケート調査についての詳細な報告をはじめ、豪華ゲストによる基調講演、3keys代表・森山も登壇するパネルディスカッションなどから、今の思春期世代が抱える課題について、それを支えるかたちについて、多角的に考えるセミナーを開催いたします。ぜひご参加ください!(後日、アーカイブ配信もございます。)
【大阪】2026年10月28日(水) 14:00〜17:00
【札幌】2026年11月26日(木) 12:30〜15:30

会場参加 無料/アーカイブ視聴(資料付き)個人2,000円、団体5,000円
▼詳細・お申し込みはこちら
https://3keys.jp/news/13932/



このコーナーは、オートレースの補助を受けて連載しています。

白書−日本の子どもたちの今

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